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特集

【Pioneer’s Session VOL.6】田中康之 × 安藤圭祐 × 池田朋史 <後編>

ps第6回後編サムネイル

平素より慶應ラクロスへ多大なるご支援、ご声援をいただきありがとうございます。
今回は第6回となる対談の後半をお届けします。

今回は、慶應ラクロス部の中枢を支える「主将」をテーマに、卒業生からは田中康之さん(1999年卒)、安藤圭祐さん(2015年卒)、現役部員からは池田朋史(4年)に参加していただきました。

後編の様子もぜひお楽しみください。

主将として意識していたことは?

池田:
ちょっとまだ2週間なんで難しいですけど笑。
そうですね、やっぱり凜大さんを尊敬してるって言いましたけど、全部を真似をすればいいってわけじゃないと思っていて。自分はそんなに1人で何でもできるタイプじゃないですし、その分、周りがとてもサポートしてくれるのは本当にありがたいと思っています。1人で抱え込まず、みんなを巻き込んでやっていく意識は持っていますね。
安藤さんはどうでしたか?

安藤さん:
僕もどちらかというと池田主将派です笑。
人を味方にする力が、1番必要だなと思います。特に僕はゴーリーなんで、できることって限られてくるよねってなった時に、いかに味方になってもらえるかとか、頼っていることを素直に言うかみたいなものはすごい大事にしてました。
やっぱり僕の時は、副将をはじめ、オフェンス陣だったり、他の下級生のディフェンスの幹部の子たちがびっくりするぐらい優秀で。年間の練習メニューとか、戦術みたいなものは、僕はほとんど関与してないレベルでした笑。その代わり、僕が大事にしてたのは、練習中や行き帰りの道とか慶應ラクロスというものを背負っている瞬間に関しては、誰よりも ”模範” であるべきだみたいなものはすごい意識してたことです。
みんなにお願いするにあたって大事にしてたのは、1人ひとりがやりたいラクロスだったり、思い描いてる理想がある中で、全員がそれにある程度納得して、それだったらいいよねっていう世界観に到達するための作戦を、俺や俺より優秀な人たちに書いてもらうっていう感じで頼りまくってたっていうのが実態かなとは思います。

池田:
やっぱりついていきたくなるって大事ですよね。

安藤さん:
ついて来なくてもいいんだけどね笑。
僕は当時、全大学生に共通する目標って4年間良い学生生活だったなって思うことだと考えていて、我々は分かりやすく4年間の全ての時間をラクロスに注ぎ込んでるわけ。つまり、慶應ラクロスに4年間いてよかったなって思ってもらえればなんでもいいんじゃないかっていう風に思ってました。
じゃあ、1人ひとりが自分らしくとか、俺がやりたいことみたいなものによって、その目標が達成できるのだったらいいんじゃないと。ただ、ラクロス部、体育会ラクロス部である以上、1番部員満足度が高まるのが勝利だと思ってたから、当然勝利を目指すし、日本一になって当然だと思うけど、それと同じぐらいというか、部員満足度ために日本一という目標があると思ってる。
だから、超究極の極論なんだけど、部員満足度が100%だったら、Final4にも行けなくていいんじゃないかっていう風に思ってる。

池田:
そうなんですね。

安藤さん:
でも、多分それはあり得ない。
なぜなら、部として ”勝利” を求めるのが、部員満足度が最大限に上がるものだと思ってたから。だから必然的に勝利が必要になると思ってたって感じかな。

池田:
チームの雰囲気を良くするために、下のチームを見に行くのって結構大変だったりすると思うんですけどどういった感じでコミュニケーションはとってましたか?

安藤さん:
当時は、一回だけ130人全員と面談をさせてもらった記憶があるよ。
「なんで入った」とか、「何してんの」みたいな。結局1回しかしてないんだけどね。当然全てを見きれるわけはないから、他の部員を巻き込んで面談とかをして、見ようとしている感を出すっていうことはすごくこだわってたかな。

池田:
130人だとかなり時間がかかる作業になってきそうですね。 田中さんは稀に見るリーダー像だったということを先ほど語られてたんですけど、なにか意識してたことってありますか?

田中さん:
僕の時は、安藤くんと逆で目標を日本一に全振りしたかな。
僕が1年生の時まで全日で3連覇していたんだけど、その翌年から全日のFinal4で負けたり、決勝で負けたりっていう形で、2年連続日本一を逃してたんだよね。だから、なんとなく絶対日本一にならないとダメなんだっていう感覚があった。
当時は、部活に所属していた人に1番いい大学生活を届けたいみたいなのって、頭の片隅にもなかったかな。今振り返れば、もう1度主将をするなら、まさに安藤くんが言ったようなことをやりたいと思う。
当時は日本一に全振りして、この代で日本一になるために何が必要かって考えた時に、徹底的に優先順位をつけた。自分の代は後輩にU19とか代表とかを経験したスター選手が多くて、ほぼ試合メンバーは下級生が中心だったんだよね。

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その中で自分は、その戦力がどう最大ポテンシャルを発揮してもらえるかっていうことだけを考えていたかな。例えば、当時の恐い副将に1年生のレギュラーがビビっていれば、チームの盛り上げ役のような感じで慰めたりとかしてたね笑。だから、チームの状態を良くするっていうところに、自分の役割があると思って、そこに集中してやっていたかな。
日本一に直接関われたっていう実感があるメンバーには、本当に良い1年になったと思うんだけれども、反作用として、みんなで掴み取った日本一と言えるほど全部員を巻き込めなかったことは、卒業してから負い目に感じています。
池田くんがこれからマネジメントしていく時に、 直接一緒にプレイしない人の方が多いチームにおいて、何をチームの目的と置き、どうやってチームにいてよかったって感じてもらうかはすごく大事なポイントだと思う。
僕の時なんかと比べると、圧倒的に難しいマネジメントを学生の時から求められてるんだなと感じました。

池田:
そうですね。
先ほど安藤さんが、勝つことが部員全員の満足度を上げるっておっしゃってたと思うんですけど、やっぱり120 人ぐらいいる中で、直接一緒にプレイしない人の満足度を維持することって難しいですよね。

田中さん:
難しいよね。直近で全日勝ったのって4年前くらいだっけ?

池田:
そうです。4年前です。

田中さん:
多分、20年ぐらい空いていたと思うんだけど、僕の代がその前の最後だったんだよね。
当時は、本当に日本一に全振りしてたから、多分そんなに面白いラクロスじゃなかったんだよね。セットプレーとか1番効果的・効率的なことをとにかく高めてた。あの代で、日本一になるためには最適な手段だったと今でも思う。
戦力としては圧倒的に充実した翌年のチームは、前年に得ることができなかったものも求めて、自由度を利かせたり勝ち方にもこだわった。もちろん様々な要因が影響しているけど、結果としてFinal4で負けてしまった。後輩たちの挑戦はもちろんリスペクトしているけど、理想のスタイルにこだわったり、全部員の幸せを本当にケアしながら日本一になれるほど甘くはないのかもしれないとも感じる。

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日本一と全部員の幸せの実現という理想を掲げるのは簡単だけど、どこまで勝ちに振り切らないと勝てない環境なのか、チーム内の一人ひとりのモチベーションにどこまで気を配る必要があるのか、そのバランスは代によって違うと思う。だからこそ、最初にチームの方向性をどうするか見極めるのが大事なんじゃないかな。

池田:
そうですよね。
勝つことだけを目標にしてたら、やっぱり今の社会人コーチの方に全部戦術とか練習メニューとかをお任せして、トップレベルの指導を受けるのが1番の近道だとは思います。けど、やっぱ部員の満足度だったりっていう面や、”パイオニア” としてやってきた慶應ラクロスにいる上で、学生主体っていうのは守らなければいけないものだと思います。
ただ、学生主体では何年も連覇を続けてる社会人を倒すのはほんとに難しいし、田中さんのおっしゃるバランスが大切だと思います。どっちに重きを置くかみたいなことですよね。

安藤さん:
僕は、自分たちで主体的に学生主体をやめると決めたなら、それ自体が主体的な選択になると思うんだよね。だから、 “パイオニアプライド的なものを守らなきゃいけない” という義務感に縛られる必要はないと思っています。
慶應ラクロスはパイオニアであり、歴史があって、過去の知見や相談できる人もたくさんいると思います。でも、その年のメンバーが表現する慶應ラクロスこそが、その年の慶應ラクロスであっていいんじゃないかと。だから、池田主将の代が「勝利に全振りする」と学生主体で意思決定し、「私たちは練習メニューを一切構築しません」と決めたとしても、それが自分たちで決めたことなら、僕は何とも思いません。
結局、大事なのは”自分たちの意思で何をしたいのか” ということ。日本一を目指すことも、義務でやるものではないと思いますし、それを目指さない選択をするのであれば、その理由が明確で、自分たちの中でしっかりとした軸があれば、それでいいと思う。

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これは、10年経って引退したからこそ、今こうして言語化できているけど、当時はただただ熱い想いを持っていたくらいだったから、「全員で日本一を目指すぞ」とか、「部員は家族だ。家族よりも長い時間一緒にいるんだから、みんなで幸せになろう」といったことしか言ってなかったかな。でも、根底には、「自分たちで決めたことを自分たちのやり方で成し遂げることが、人生で一番いいのではないか」という想いが、無意識的にあったんだと思います。
当時はうまく言語化できていなかったけれど、この想いを周りが汲み取ってくれたこと、あるいは汲み取ろうとしてくれたことには、すごく感謝しています。そして、さっきの「尊敬するリーダー」の話に戻るけれど、これに一番付き合ってくれたのが、当時のヘッドコーチの橋本さんです。彼は、僕の10個上で、慶應ラクロスのヘッドコーチを約10年務めてくれた方で、毎週末グラウンドに来て、脇で新聞を読みながらコーヒーを飲んでいるような人だったけど、相談すると必ず、「いいじゃん。でも、この観点が抜けてる。この立場の人たちはどう思う?」と、僕の意思決定に蓋をするのではなく、解像度を上げるような質問を投げかけてくれました。そのおかげで、組織として目指したいコンセプトや、やりたいことが明確になっていったと思います。

田中さん:
あぁ、ハッシー(橋本さん)って10年もやってくれてたんだ。

安藤さん:
みたいですね。10年は言い過ぎかもしれませんが笑。

田中さん:
でも、ずっと関わってくれてたんだよね。

安藤さん:
はい、高校を含めると10年近くですね。

田中さん:
ちなみに安藤くんの話、僕も100%賛成よ。
僕が4年間いた中でも、各代ごとにコンセプトは全然違ったし、その後の柴田も松永も変えたと思うし。今年の方針はこうだっていうコンセンサスを代ごとに決めるのは全然ありだと思う。

池田:
確かにそうですね。

田中さん:
最終決定を学生がするっていうところだけ伝統として残せば、何でも変えていいんじゃないかな。
例えば、日本一を目指しませんと言ったら、反対するOBGはいるかもしれないけど、こういう理由で今は一歩引く時期だとか、日本一を追い求めすぎると今はマイナスになるから、この1年間だけはこうしたいという説明ができれば、納得する人は多いと思う。
これまでのOBGを見ても、これはダメだと頭ごなしに否定する人はいないんじゃないかな。伝統があると、”こうあるべき”みたいな考えを持つ人が出てくるけど、慶應ラクロスに関しては、そういうOBGがいる印象は全くないね。

池田:
形にとらわれずに、本当に自分たちが作りたい組織像をまず全員に伝えることが大事ですね。そのためにも、自分たちの中で解像度を上げていくことが必要だと思いました。

田中さん:
安藤くん的にはどう思う?
リーダーシップ論的には、最後は池田くんが決めるべき?

安藤さん:
最終的な意思決定は彼がするべきだと思います。でも、その過程は時間をかけてじっくり議論すべきだし、みんなの意見を聞いて、共通する部分を探しながら、みんなが納得できる方向性を見つけるのが一番美しいんじゃないかな。
とはいえ、池田くんを主将に選んだのはみんなだから、最終的には彼が「これが自分たちの進むべき道だ」と意思決定をするはず。その上で、みんなが「じゃあ、どうすれば最短でそこに到達できるか」、「この1年で成果を出せる方法は何か」、「来年以降にもいい影響を与えるためにどうするか」を考え、組織を作り上げていくのが良いんではないでしょうか。

池田:
ありがとうございます。

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現役部員に向けて一言お願いします。

安藤さん:
やっぱり昨日より今日、今日より明日、昨日の自分を競技力でちょっとでもいいから超えること目指してほしいです。
多分、僕らの時よりも選手以外の活躍できる領域とか幅が多い、いい部活になってると思います。トレーナーであればテープを巻く技術だったりとか、マネージャーであれば段取りを組む力とかだと思うんですけど、それが昨日よりうまくなっているかっていうところに、選手を始めとして、とことんこだわってほしいなっていう風に思います。全員が積み上げたものが、最後には組織全体の総量になると思うので。つまり、この部活にいて良かったって思ってほしいし、私が、俺が日本一にさせたという自負を全員が少しでもいいから持てる部活を目指してほしいと思います。

田中さん:
“誇り”を持てるような1年をそれぞれが意識して過ごしてください。
やっぱり自分が選んで入ってきた環境だから、このチームで過ごす時間を最高の4年間にすることを一人ひとりがコミットして過ごしてほしいです。メンバーの自立性とか自責性との相乗作用で良い組織って生まれてくると思うので、誰かにしてもらうのではなく、自分で誇りの持てる時間にしていくことを現役部員のみんなには求めたいと思います。

安藤さん:
最後に、池田主将に向けて一言あるとすれば…部員って今150人くらいだよね?

池田:
いや、今は110人くらいですね。

安藤さん:
でも引退する頃には150人くらいになってる可能性もあるよね。そう考えると、この1年で150年分生きるくらいの感覚になると思うんだよ。全員の貴重な大学生活の1年が自分の肩に乗るから、めちゃくちゃキツいと思う。でも、その分、人生で一番濃い1年になるのは間違いないから、やり切ってほしいなって思う。
部員に対しては「昨日より今日、今日より明日うまくなろう」とか、満足度を上げるように熱く伝えていくことが大事だけど、一方で、幹部内では「本当にこれで勝てるのか?」「この作戦で大丈夫なのか?」っていうのを、めちゃくちゃ冷静に、ドライに見ないといけない。相手のことをしっかり研究して、シビアに判断することも必要になってくる。だから、いろんな顔を持つことになると思うけど、それはすごく勉強になるし、ぜひ頑張ってほしいな。

池田:
はい、ちょっと頑張ります。

安藤:
いいね、それでいい!それでいい笑。

田中さん:
凜大くんのことはそこまで詳しく知らないけど、彼みたいにならなくてもいいと思うよ。
池田くんは違うタイプな気がする。

池田:
そうですね。

田中さん:
なんか無骨でちょっと不器用そうな感じが逆にいいというか、周りが「助けてあげなきゃ」って思うタイプだよね。凜大くんは自分で何でもできそうな雰囲気があるけど、池田くんは周りに助けてもらう力がすごく高いんじゃないかな。だから、無理にキャラ変して「ああいう風にならなきゃ」って思う必要はないと思う。
自然体でいろんな人に助けてもらいながらやっていけばいいんじゃないかな。塾高のアメフト出身っていうのもあって、すごく親近感湧いたし、応援したいなって思ったよ。
みんながんばってほしいなって、改めて思いました。

池田:
ありがとうございます。

安藤さん:
バイブスでいけ笑。

池田:
そうっすね、バイブスぶち上げていきます!

田中さん:
うまくやろうとしなくていいと思うよ笑。

安藤さん:
熱量だろ!完全に熱量系だから。

田中さん:
ね。スマートにまとめようとしないほうがいい気がするな。

池田:
そうですね。自分でも凜大さんみたいにできるとは思ってないんで、周りを頼りながらこの1年頑張りたいと思います。

安藤さん:
素晴らしい笑。ハイカロリーに過ごしてくれ!

本日もお楽しみいただけましたでしょうか?
ご多忙の中ご協力いただいたお三方には、心より感謝申し上げます。

今年度も、Pioneer’s Sessionの活動を続けて参りますので、引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします!

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