【Pioneer’s Session VOL.5】白井聡 × 猪野慎太郎 × 佐藤孝紀 <後編>
平素より慶應ラクロスへ多大なるご支援、ご声援をいただきありがとうございます。
今回は第5回となる対談の後半をお届けします。
第5回は、慶應ラクロス部を支える「副将」をテーマに、卒業生からは白井聡さん(2007年卒)、猪野慎太郎さん(2015年卒)、現役部員からは佐藤孝紀(4年)に参加していただきました。
後編の様子もぜひお楽しみください。
理想としていた「副将の在り方」はありましたか?
白井さん:
僕は副将に立候補してなったんですけど、当時の先輩を見ても副将における明確な役割ってあんまりなくて、そこの役割探しからやってました。
明確な役割でいうと当時、戦略ユニットと運営ユニットっていう2つのユニットがあって、運営ユニットのリーダーをやっていました。
戦略ユニットは純粋にラクロスを強くするユニットで、運営はチーム全体のマネジメントみたいな。当時のメンバーも含めてもう少し詳しく話すと、戦略ユニットは、主将の岡田、副将の神津、板野(次の代の主将)がラクロスをよく考えられるし、何よりも、星野がヘッドコーチをやったことが大きかったです。彼はアメリカ留学から帰ってきてずっと試合に出てたんだけど、彼自身が目標の日本一から逆算した時にプレーを続けるよりもコーチをした方が良いってことでヘッドコーチになったのよ。実際に星野の戦術で勝った試合は何度もありました。
脱線してしまったけどそれほど盤石のメンバーで”最強のラクロス”を作るってことに対しての熱量はすごかったです。
運営に関しては基本的にチーム全体のマネージメント。ちゃんとラクロスをできる環境を作っていくこと。ミスるとラクロス部が弱くなる、やや守り的な要素が強いユニットだったかな。グランド、備品管理とか、ラクロス協会とか色々な関係者との渉外だったりとか。あと、今もあるのかなファミリー活動みたいな。 4年生から1年生で10人ぐらいの班作って、そこで縦で仲良くなるみたいな、そういった運営ユニットのリーダーをやってました。実はその運営リーダーって、各班の班長が全部ちゃんとやってくれるから、俺何にもやることなくて笑。
その上で”じゃあ副将として何したらいいんだろう”みたいなところは考えたかな。その前の年は東大に負けちゃって、学生1位を取れなかったんのよ。だから、なんとしても自分たちの代はまずは学生一の奪回、そして日本一もっていう状況だったので主将とヘッドコーチとかは、ラクロスを純粋に強くすることにかなりの力を割いてました。そこで俺の役割何かなって思った時に、この副将っていう少なからず影響度のある立場において色々な部員を見ることは意識しました。
当時でいうサテライトっていうBチームや、アーセナルっていうCチームの選手たちを常によく見て、Aチームで何してるのかっていうところを伝えたり、どういう選手を欲しがっているか、彼らの得意領域を見ながら、こういったとこももっと伸ばした方がいいよとか、ここもっと改善した方がいいよみたいな、色々なやつらに声をかけるっていうことはやってました。
佐藤:
この大きな組織の中で、副将1人で全員との対話に注力するのはすごく大変だったとは思うんですけど、特に苦労したこととかってありましたか?
白井さん:
全員に必ずってことではないのでそこで苦労したって思いはないけど、役割が明確でなかった分、自分がやってることが何かに貢献できてるのかみたいなところは、悩んだかな。
俺はラクロスの戦術に関わってるわけでもなかったので、ちゃんと副将としてやってんのかな、みたいなところはずっと感じてました。
佐藤:
僕も、白井さんが当時考えていたことをこの1年間本当に考え続けてます。副将って役割が曖昧で、主将の補佐って言ったら一言で完結するんですけど、実際にその主将の補佐って何ができるのかみたいな。 今年副将が2人いる中で立ち位置の差を1年間考え続けて、未だにその明確な答えは見つかってないです。
僕にとって4年間の中で1番大変だった年が今年でした。副将も自分も立候補した身なので、責任を持って果たさなければいけないっていう中で、 何か部活に貢献できているのか、役割果たしてるのかなっていうのは、常に考えながらやってきました。例えば、アップダウンの声をしっかり出すとか、プレー外のところでも自分が模範となるように意識してます。僕の代の特徴として、主将ともう1人の副将の技術力がすごい高くて、2人も日本代表クラスの選手がいる中で、自分の発言に影響力を持たすために、日々のプレー外の一面や、各選手への接し方は拘っています。
先ほど白井さんも仰る通り、自分もアーセナルなので、同じアーセナルの子には積極的に話すようにしてます。 なので、今自分と重なる部分があってぐっとくるものがありました笑。
白井さん:
そこでいうと俺は基本的な態度みたいなところは優等生的にできてたんだけど、ラクロスが下手くそだったからそこは苦労した。色々なやつに声かけて、アドバイスとかしてんだったら、ちゃんと自分が試合出ないと示しつかないし、発言の力も弱くなると思ったので、4年は死ぬ気でラクロス頑張った笑。
佐藤:
全く同じです笑。
自分がやっぱり影響力を持つようなプレーをしないと、副将としての発言1つ1つに説得力がなくなったりしてしまうことは自分も考えてます。今年1年副将になってから、ラクロスへの向き合い方はより真摯になったと思います。
ちなみに猪野さんの代はどのように副将を決めてましたか?
猪野さん:
あんまり覚えてないけど、うちは他薦から始まって最後自分がやりたいかとかだったかな。最初みんながこの人がいいと思いますみたいなのを出して、最初主将と副将が1人ずつ決まって、それ以外は話し合いだったと思います。
佐藤:
猪野さん自身に副将をやりたいという意識はありましたか?
猪野さん:
そうね。基本的にはやって当然ぐらいとは思ってましたね笑。
繰り返しですが僕は副将としては特殊で、なんで声をかけてもらったかも謎な部分は多いんですが、今日は反面教師的に振る舞おうと思います。僕って幼少期からどの部活動やっても、主将か副将をずっとやってきてました。チームのリーダーをするのが当たり前で、大抵のスポーツを何やってもそこそこうまかったので。
なので、副将としてどうするべきかっていうのはあんまり考えたことなかったです。自分のあるべき姿を考えて、ありのまま振る舞って、それを示していればリーダーシップになってました。それでも、3年生の時に膝を怪我して、そこからすごくリハビリしたんですけど、してもしても試合に出ると足を引きずりながらしか走れないとか。ダッジがもう膝から崩れ落ちちゃうみたいな感じでした。怪我を治しながらラクロスをやろうっていうことで、自分にフォーカスをしていたので、あまり副将だから周りどうするかっていうのをしばらくやってなかったんですよね。自分のことで一杯一杯で。その中である日、後輩から猪野は試合に出てないくせに偉そうで気に食わないみたいな、謀反を起こされました笑。
だから別の人間を副将に立てて、僕は降りた、そういう経緯がありました。代として、試合に出てる別の副将ではないと、後輩がついてこないし、僕の態度も悪く写っていたし。なので半ばファイアーされたような感じでした。
そこで副将としてできることをやるかっていうと、結局は試合に出れなきゃ意味ないと思い、リハビリもしてなんとか間に合わせようとはしていたけれども、なかなかダッチできないまま試合に出ることができなくて。なんとか膝動かない中で全大決勝までは余裕があったから出れたけど、全日の決勝では出れない状況の中、最後に後輩に追い抜かれました。
なので失敗体験続きだった副将だったかなっていうのは、今になってはすごく思っていますね。
佐藤:
今の猪野さんから見て、もう1人副将を立てる時に様々な葛藤があったと思うんですけど、その当時に戻れるなら何を行動として変えるとか、意識的に何かしてたみたいなことってありますか?
猪野さん:
1番は手術受けたかな笑。治らずにずるずるやっちゃったので。
けど、なんだろうな。正直副将だからなんかしなきゃいけないとかはないと思ってて。得意な人が得意な振る舞いをすればいいし、その上で周りがその人を副将たらしめてくれるだけであって。
それはその人の日頃の振る舞いだったり、プレイっていうのが人を引っ張ることが大事であると僕は思っているので。スポーツではとにかくプレイで貢献できたか、できなかったかは重要だと思います。結局そこが一番悔やまれるなってところですかね。
佐藤:
そういうプレーで引っ張る、試合に出て活躍して存在感を示すみたいな副将像は僕も目指したかったところです笑。やっぱり色々な副将像があるなっていうのは、お二人の話を聞いてても思いますね。
その中でも、猪野さんが怪我を負っても試合にでたいと思い続けられた原動力ってなんですか?
猪野さん:
なんだろう。プライドかな。
自分の可能性を自分が1番信じていたので、それに賭けていたことが原動力だと思う。なんか就活のためとか、成長するためとか色々あると思うけど、僕は、自分自身の目的に対する投資をやめる発想がなかったので。そんな感覚ですかね。
やっぱり、自分は親から投資してもらった想いを背負って、自分自身が何をしたいかと問いかけた時に”親が応援してくれる自分になるしかない”と僕はそれしか考えていなかったですね。
そういう意味だと部活動に所属して親が1番興奮するのは、やっぱり試合にでている自分なのかっていう風に思ってましたね。特殊かもしれないし、かなり自分中心ではあったので周りとは少し違ったかもしれません。
佐藤:
自分の可能性を自分が信じ続けられるって誰にでもできることではないと思います。
白井さんは今になって思うこととか、当時副将としてもっとこうすればよかったなみたいなところはありますか?
白井さん:
後輩とのコミュニケーションは、何か狙いがあったというより気付いたところを話すって感じでやっていたので、もう少し戦略的によいか考えていけたら良かったなと思った。
数年前に他の大学でコーチをやってた時に、選手間で評価されていないある選手に、絶対伸びるなって思って長期的に声をかけ続けたらびっくりするくらい伸びたってのがあって。
この経験で、選手が成長するためには先輩やらコーチがいつも見てくれていると感じることだったり、将来的にチームの力として考えてくれていると思われることは結構大事だなって思いました。だから漠然と声かけるでなく戦略的に見ることは大事かなと。例えば、本人の強みだったり弱みだったり、短期/長期で何を伸ばして欲しいとかをシートとかで記録として残して伝えてあげるとかね。
「慶應ラクロス部の副将をやってよかった」と思った経験はありますか?
猪野さん:
割と人生初の大きな失敗体験というか、試合に出られないという状況や、後輩から「ついていけません」と言われる経験は初めてでした。現在、会社経営をしている中でも、当時の後輩たちが何を思っていたのかを振り返ることがあって、この経験は今でも教訓として生きていますね。副将を経験したことで、人から認められリーダーシップを取るとはどういうことなのかを少しは理解できたと思います。
白井さん:
俺は2つかな。
1つ目は、こういった立場だったからこそ、幹部としての考え、そして現場の考えを同時に見ることができた1年間でした。そんな1年だったから組織面とかは勉強になったかな。
2つ目は、副将としての立場に限ったことではないけど、上の代、下の代、関わるすべての人と積極的にコミュニケーションを取ることができて、その結果、今でも大学時代のラクロス部の仲間たちと深い繋がりを持ち続けられているのは良いかな。
俺は転職しているけど、今でも前職時代の慶應ラクロス部メンバーに飲み会とか声をかけてもらえるってのはラクロス部ならではの良さだったと思います。
佐藤:
僕はありきたりな答えかもしれないですけど、1プレイヤーだった頃には見えなかった世界を見ることができたというのはあって。幹部として、選手だけでなくスタッフや学生コーチともコミュニケーションを取ったりする中で、140人もの部員がそれぞれ違う価値観を持っていて、そういった多様な考えを持つ人たちと関わること自体がすごく勉強になりました。自分とは全く異なる価値観を持つ人と1つの組織で共に活動する経験は貴重で、自分の人生において良い経験なのかなと思っています。
もう1つ強いて言えば、組織の中でどのように貢献できるかを模索しながら、がむしゃらに頑張れているのは人生において良い経験かなと思っていて。まだ現役で今後の人生にどう生きていくかは分からないですけど、今までできてこなかった経験なのですごく副将をやってよかったなと思います。
現役選手に向けて一言お願いします。
白井さん:
まずは必ず日本一を取ってください。信じてます。四年生は限られた時間、後輩たちに一生の印象に残るような、生き様を見せてあげてください。
長期的なメッセージで言うと、ぜひこのブログのタイトルにも書いてあるような、
”Pioneer’s Pride”っていうのを意識して過ごしてほしいと思います。これは慶應ラクロスのフィロソフィーっていうのかな。
”Pioneer’s Pride”は慶應ラクロス部の活動が、日本のラクロスの進化に繋がるってことだと思います。
社会人で関東以外でラクロスに携わることもありましたが、全国のラクロッサーが慶應のラクロスを見ています。だから良いものも悪いものもしっかり広がっていく。学生ではなかなか味わえない経験だと思います。見られるプレッシャーはあると思いますが負けずにラクロス界を引っ張っていって欲しいです。
今の慶應のラクロスをみると、雰囲気も激しさも戦術面も見ていてワクワクするし、ラクロス界引っ張ってるなあって勝手ながら思ってます。頑張ってください。
猪野さん:
日本一を取ってください。頑張ってください。
基本的には、部活動って一部の人は違うかもしれないですけど、周りの環境、親にやらせてもらってるものなので、その投資を用いて、自分が何の結果を出すのかという考え方は大事だと思います。まだ、たかだか20年ぐらいしか生きていなくても、残り80年ぐらいある人生の割と大きなポーションを占める経験を今してると思いますので、今の経験を元に、自分の人としての根源的な魂、価値みたいなものをどう磨いていけるのかみたいなのは、考えながら部活動をやると良いかなと思います。
僕は現役時代もその価値観を信じていましたけど、現役選手の皆さんも考えるといいかなと思ってます。ただし目先のことを一生懸命できる人こそ素晴らしいと思うので、頑張ってください。
佐藤:
本日は本当にありがとうございました。
色々お話を聞いていて、副将って、先ほども申し上げた通り、色々なあり方が存在するのかなっていう風に思ってて、それぞれの副将像っていうのを知れた自分の中で貴重な機会でした。ラクロス部を引退されている方々から考える、部活動での振る舞い方とか、当時何を感じて、どう行動するか、後々この経験がどのように生きていくのかお聞きできたので、とてもいい経験になりました。
1月18日にグリズリーズ(社会人チーム)を倒して日本一を取るので、結果を楽しみにしていてほしいですし、応援していただけると本当に自分たちも嬉しいです。よろしくお願いいたします。
今回もお楽しみいただけましたでしょうか?
ご多忙の中ご協力いただいたお三方には、心より感謝申し上げます。
そして今年度のPioneer’s Sessionは本特集を持って最後となります。
来年度も引き続き、活動を続けてまいりますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします!