【日記リレー2020 vol.18】宮越陸人
『俯瞰と環境』
働き者だが不満を多く抱える里佳子から文章を引継ぎました、4年の宮越です。彼女はいつもぶつぶつ言っているので、さぞ文章が長かったかと思います。とは言え、僕も容赦無く書きます。
日記リレーも今年で4度目です。1年生の時は、”考えて”ラクロスをすることについて書きました。2年生のときはプロテインとアミノ酸について概説し、昨年度は後輩に賢い大学生活の過ごし方を伝えました。今年は、この文章を読む全部員に向け「俯瞰」と「環境」という二軸で言葉を残します。
大学4年生になり、シーズンの半分を下チームのプレーイングコーチとして過ごしました。これまで一選手として無鉄砲にプレーしていた頃とは異なり、競争を失った代わりに責任が待っていました。立場上選手から一歩引いて周囲を見渡すようになり、選手の力量を客観視するようになりました。実は、このときの癖が形を変え今でも残っています。
今回伝えたいことの一つは、
“自分を俯瞰すること”。
他人の良し悪しはすぐに目につきますが、自分で自分を見つめることは容易でないと思います。あいつより俺の方が上手い、こいつの考えているラクロスは俺に合わない、すかしているあいつが嫌い等々は僕も頻繁に思っていました。では、本当に誰よりも考え、努力する自分はそこにいるのでしょうか。自らの妥協、怠惰、欠落を咎める必要はないのでしょうか。不満が募ったとき、行き詰まったときに自分を見つめ直すようにすると、自ずと落胆、苛立ち、焦りといった無駄な感情が抑えられ、目指すべき方向性が見えてきます。選手に戻ってからフィールドで感情を露わにしなくなったのは、このことが功を奏していると感じています。
さて、自らを俯瞰する必要性について説きましたが、何を指針にして自分を評価すれば良いのでしょうか。ここで、二つ目のキーワードを示します。
“身近な環境にこだわる”
他者と比較して自分がどうであるかと考えることは、しばしば悪とされますが自省の本質はここにあります。自分の評価は、他者との相対的な位置付けにすぎません。自己を俯瞰的に見ることにおいて、周囲の人間は多大なる影響力を持っているのです。もっと言えば、あなたはあなたの最も身近にいる数人に良くも悪くも引っ張られながら生きています。
この文章を読むあなたの身近にいる3人を思い浮かべてください。家族でも構いません。時間的に最も長く一緒にいる3人です。その3人の生活強度を100点満点で点数化してください。
ではその3つの数値の平均値をとってください。60?70?はたまた90?この平均値が今のあなたの生活強度のおおよその値です。
自己の俯瞰における他者の重要性については理解いただけたかと思います。ラクロスが上手くなりたい、勉強ができるようになりたい、金持ちになりたいと思っているのであれば、その道に秀でた人物と積極的に関われば良いのです。言い換えれば、日々自分が接する人物を自分の目標に合わせて選択する必要があります。すると、彼らの存在に引っ張られながら、あなたは目標の自分に近づくことができます。これが、“身近な環境にこだわる”意味です。
僕は毎朝、練習への電車の中でTucker durkinやChris Fakeの動画を見てオンボールを学んでいます。フィールドに行けばオフボールの上手い奴らが多くいるので積極的に聞くようにしています。研究室に行けばHarvardやPrincetonで勉強してきた人たちと切磋琢磨できます。ジムに行けばボディビル日本チャンピオンにトレーニングを見てもらえますし、不動産会社社長の筋骨隆々のトレーニーにも会えます。決してHarvard LacrosseからMITでPh.D.取得を目指すような、いわゆる環境に恵まれた人間でなくとも、工夫と考え方次第でどうにでもなります。
一重に、自分は身近な環境の賜物であることを再認識してください。そして自分という人間を見つめ直してください。これが、慶應ラクロスの皆へのメッセージであると共に、この部活で学んだことの全てです。慶應ラクロスという存在に、そして、僕と関わりを持ってくれた全部員に心底感謝しています。
それでは、僕の友人の中で唯一怠惰で優柔不断な村社君の文章を待ちましょう。このままの人間であるなら、僕はそろそろ友達やめます。